整備教室セビスクでは"趣味ではじめる二輪整備"をコンセプトにバイク整備が初めての方から上級者まで楽しめる講座を開催しています。

興味のある方は現在開催中の講座をご確認ください。

スーパーカブ・リトルカブのタペット(バルブクリアランス)調整の方法

参考動画

※動画の内容は講座の内容とは関係ありませんが参考になりそうなものを選んでみました。
※同じスーパーカブでも年式によって多少手順が違いますので動画も2種類用意しました。ご自身の車体に合った方法でお試しください。

用意するもの

タペットアジャスト Amazon
シックネスゲージ Amazon
17mmメガネレンチ Amazon
(セットで購入するのがおすすめです。)
14mmディープソケット Amazon
Tレンチ(8mm) Amazon
※タペットアジャストレンチはあると便利ですが9mmのメガネレンチとラジオペンチで代用も可能です。

要チェックポイント

  • シックネスゲージの感覚としては羊羹を切るような感覚で調整する。
  • エンジンによっては9mmのロックナットを本締めした際に調整したアジャストスクリューが一緒にしまってしまうことがあるので個体差には注意。
  • 9mmのロックナットを締める際、アジャストスクリューのネジのピッチは0.5mmと他のネジ(1mm)と比べるとネジが細かくネジが切れやすいため強く締めすぎないように注意する。
  • エンジンは暖気せずに冷間時に調整すること。
  • 0.05mmの幅に調整する。0.05mmのシックネスゲージが入って(羊羹を切る感覚)、0.07mmのゲージが入らなければ、0.05mm以上、0.07mm以下の調整幅。

エンジンからカチカチ音がしたら調整してみよう

まず、タペット(バルブクリアランス)調整はどのような場合に必要なのかというとアイドリング時にカチカチやチッチッチッチッと音がする場合に試してみる価値があります。

バルブクリアランス調整とはバルブとロッカーアームの接触部の遊びの調整を差し、クリアランス=隙間の言葉の通り、隙間の幅の調整を行います。

圧縮上死点を出す

いきなり難しい言葉が出ましたが作業自体は難しくはありません。

まずはまたがってエンジン左側にあるジェネレーターカバーを取り外します。ジェネレーターカバーは8mmのTレンチを使うと外しやすいです。ジェネレーターカバーを外す前に作業の邪魔になるチェンジペダルも外しておきましょう。チェンジペダルは10mmのボルト1本で止まっています。

あと、圧縮が残っているとクランクシャフトを回すのが大変ですのでプラグを抜いておきましょう。プラグの外し方は下記の記事を参照してください。

【全手順】スーパーカブ・リトルカブのプラグ交換の方法

続きを見る

圧縮上死点を出すにはクランクを回す必要がありますので14mmのボックスレンチを使ってフライホイールの中心にあるボルトを回します。この時、回す方向は反時計回りに回すようにします。

フライホイールを左に回しつつフライホイールに刻まれた「T」のマークを探し、エンジンの切り欠きと合わせます。このTマークと切り欠きの合わさったところが圧縮上死点になるのですが、ここで注意点があります。

4サイクルエンジンの場合、クランクシャフト2回転で1工程(吸入、圧縮、燃焼、排気)が行われます。ですので、1工程(吸入、圧縮、燃焼、排気)行われるまでに切り欠きとTマークが合わさる瞬間は2度訪れます。この2度のうち1回は排気上死点でもう1回が圧縮上死点となり、この圧縮上死点に合わせる必要があるのです。

排気上死点の圧縮上死点の見分け方

排気上死点の圧縮上死点をフライホイールを回した感覚で見分けられる人はたぶんいません。これらを見分けるには下記のいずれかの方法を使います。

1.プラグホールを指でふさいで確認

プラグホールを指でふさいで状態でフライホイールを回し、プラグホールを抑えた指が空気で押された後に合わせたTマークが圧縮上死点です。

2.アジャストスクリューを指で動かして確認

Tマークと切り欠きを合わせた状態でアジャストスクリューを指で掴み前後に軽く動かしてみます。カタカタと動けば圧縮上死点である可能性が高いです。

排気上死点の場合は、ロッカーアームがバルブを押しているためアジャストスクリューを指で掴んでもカタカタと動かすことはできません。

3.カムスプロケットの○マークで確認

こちらは先の2つの方法と比べると一手間増えますが確実な方法です。シリンダーヘッドのLサイドカバーを外し、カムスプロケットを確認します。

カムスプロケットとシリンダーヘッドの切り欠きが合わさっていれば圧縮上死点です。

4.アジャストスクリューの動きを見て確認

吸気側(カブの場合は上)のタペットカバー(バルブアジャストスクリューキャップ)を外し、フライホイールを反時計回りに回していくと、アジャストスクリューがピクッと動く瞬間があります。これは吸気側のカムが動いて吸気工程が行われていることを示しています。

吸気側のカムが動いて次に訪れる上死点が圧縮上死点になります。

簡単に言うとアジャストスクリューがピクッと動いた後にフライホイールのTマークと切り欠きを合わせればOKです。

5.カムの方向を見て確認

カブの場合、シリンダーヘッドカバーを開けるとカムの動きが見えます。フライホールを回転させ、Tマークと切り欠きで上死点を合わしたときに、カム山が奥(ピストン側)に来るタイミングが圧縮上死点です。

上の画像ではカムの山をわかりやすくするために下側のロッカーアームを外してあります。実際はロッカーアームが装着されていますのでカムの山は少し見にくいです。

バルブクリアランスの確認・調整を行う

圧縮上死点に合わせたら現在のバルブクリアランスを測定してみましょう。

まずは17mmのメガネでシリンダーヘッドの上下2か所についているタペットキャップを取り外します。

下のキャップを外す際は少量のオイルが垂れる可能性がありますのでウエスなどで押さえておくか下にオイルパンなどを敷いておくようにしましょう。

タペットキャップを外すと上の画像のような状態になります。まずは現状を測定してみましょう。

垢矢印の先端あたりの隙間をシックネスゲージを用いて測定します。

これがシックネスゲージです。何枚もの薄い金属の板が重なっています。その中から0.05と0.07を用意します。何故この2枚を使うのかは後々説明します。

カブのサービスマニュアルを確認するとIN側もEX側も0.05±0.02の範囲に調整するように記載があります。

このようにシックネスゲージを隙間に差し込んで使います。上の画像は0.05のシックネスゲージが隙間に入っています。

この後に0.07を試してみて入らなければクリアランスは0.05~0.07の範囲の中に納まっているということになります。逆に0.05のゲージが入らなかったり、0.07のゲージが入ってしまった場合は調整の必要があるという判断になります。

続いて調整が必要な場合の手順を説明します。

まずは9mmのメガネでロックナットを緩めます。

ロックナットを緩めた状態で0.05mmを差し込み、そのままタペットアジャストレンチを使ってアジャストスクリューを軽く締め込みます。

軽くという表現は難しいですが上の写真のようにシックネスゲージから手を放してもギリギリ下に落ちない程度に締めておけば大丈夫です。

ぶら下がっている0.05mmを手で動かして全く動かないほど固く締めるのもダメです。羊羹を切るくらいの抵抗を感じるほどがベストとされています。

程よく調整出来たら9mmのメガネでロックナット締めます。この際、アジャストスクリューが共回りしてしまうと調整がくるってしまいますのでロックナットを締める際には空いている手でアジャストスクリューを固定しておくとよいでしょう。

ロックナットはネジのピッチが細かく、かなり舐めやすいためロックナットの締め付けすぎないように十分に注意しましょう。(締め付けトルク9N/0.9kgf)

ロックナットを締めたらぶら下がっている0.05mmを引き抜きます。調整したときと同じように羊羹を切る感覚になっているか再度確認しておきましょう。

0.05mmが問題なければ続いて0.07mmを入れてみます。正しく調整出来れていれば入らないはずです。

もし0.07mmが入ってしまった場合は隙間が広すぎますので再度調整しなおします。

調整が完了したらタペットキャップを締めて作業完了となります。

ちなみにタペットキャップにはOリングが付いていて長年使っていると硬化していたり、ひび割れなどが起きている場合があります。

非常に簡単に交換できる部品ですのでOリングの弾力がない場合やオイル漏れを起こしている場合は交換されることをおすすめします。