このページは、TW200のオイル交換についてわかりやすく説明したものです。
用意するもの
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- オイル
- オイルジョッキ
- オイルパン
- 19MMメガネレンチ
- トルクレンチ
- パーツクリーナー
- ウエス
ここでは業界歴20年・年間整備台数1000台以上のベテラン自動2輪専門整備士がヤマハのTWのオイル交換について解説していきます。
ヤマハTWは1987~2001年式のTW200と2002~2007年式のTW225がありますが、どちらもオイル交換手法やオイル量等の基準値に変わりはありませんのでTWでしたらどの年式にも対応しています。
はじめに
手順の解説の前にTWのオイル管理・交換における重要な注意点をご説明します。 ヤマハTWは1987年から2007年まで生産されたオートバイであり、最終型であっても18年前、初期型にいたっては38年前のオートバイであり、走行距離の多い車両や経年劣化の進んでいる車体が多くオイル管理は非常に重要です。 またカスタム車両が非常に多く、カスタム内容によりエンジンにかかる負担が大きくなっている車両が多いのも特徴です。 特にスカチューン仕様によりエアフィルターが社外品に交換され社外マフラーが装着されている車両でキャブレターのセッティングが出ていない車両はノーマル状態の車両に比べ燃調(ガソリンと空気の混合比率)が薄くなり過ぎている事が多くエンジンにかかる熱が非常に高くなる傾向があります。 更にエンジンオイルの全容量は1.3ℓと少量で、空冷単気筒エンジンで排気量も小さく高回転域を多様する乗り方になってしまう事が多いので更にエンジンにかかる熱は多くなり易いです。 その為、オイルの劣化や消費は早く、オイル管理を怠る事でエンジン焼き付きによる故障は非常に多いオートバイの1つとして数えられます。 私の経験ではオイル管理不足によるエンジン損傷は通勤に仕様される50~125㏄クラスの原付に次いでTW等の空冷単気筒の200~250㏄バイクが2番目に多いです。 これらの事からTWのオイル管理や交換において以下の注意点を頭に入れておきましょう。
- 日常点検としてオイル量の確認を定期的に行う(確認方法はオイル交換手順解説にて)
- オイル交換頻度を早める(2000キロ走行毎・オイルは酸化しても劣化する為、距離が伸びていなくても半年に1回)
- オイル交換2回に1回はオイルフィルターを必ず交換
- 適切なオイルを使用する(オイル交換手順解説時にて説明)
- 仕様用途や季節に応じてオイルを使い分ける(オイル交換手順解説時にて説明)
- オイル漏れ等の故障は早期発見、早期修理(信頼出来るショップにて法令点検を受ける)
作業手順
- サイドスタンドで車体を停車させる エンジンを冷やす
- オイル量を確認する フィラーキャップを取り外す
- ドレンボルトを取り外しオイルを抜く
- スプリングとオイルストレーナーを取り外す
- オイルフィルターカバーを取り外す
- オイルフィルターを取り外す
- ドレンボルトに装着されているOリングを交換する
- スプリングとオイルストレーナーを装着する
- ドレンボルトを規定トルクで締め付ける
- 新品オイルフィルターを装着する
- オイルフィルターカバーを規定トルクで締め付ける
- 新品オイルを入れる
- フィラーキャップを装着する
- 各部オイル付着部を脱脂する
- エンジン始動し暖機する
- エンジンを停止させる
- オイル量とオイル漏れを確認する
手順解説
サイドスタンドで車体を停車させる
TWの場合はオイルを抜くドレンボルトがエンジンの左側側面に付いている為、レーシングスタンド等を使い車体を垂直にするよりもサイドスタンド状態で車体を左側に傾けている状態の方がエンジンオイルが早く完全に抜け易い為サイドスタンド状態で停車させます。
エンジンを冷やす
エンジン停止直後はエンジンオイルが上部(シリンダーヘッド部)へオイルポンプにより圧送されている為、正確なオイル量も確認出来ませんし、ドレンボルトを外してもオイルが抜けきるまでに時間がかかります。また夏場の長時間走行直後のエンジンオイルは非常に高温でやけどのリスクもあります。 よってエンジン温度に応じてエンジンを冷やします。かなり熱くなっていない場合は4~5分程度おいておけば十分です。
オイル量を確認する
ここでオイルを抜く前にオイル量の確認を行います。 オイル量の確認はエンジンが冷えた状態で車体を垂直に立て、エンジン右側側面のオイル点検窓にて行います。油面が下の線と上の線の間にあれば問題有りません。 この工程は前回のオイル交換後からオイル消費がどれ程あったかを確認する為です。オイルレベルが点検窓のロアライン(下の線)を下回っている場合はエンジン内部の不具合により過度のオイル消費が発生している場合やオイル交換サイクルが遅すぎた可能性があります。この工程はオイル交換後では確認出来ず良心的なショップでは診てくれた上でアドバイスをしてくれます。
フィラーキャップを取り外す
フィラーキャップを取り外します。オイルを抜く前にキャップを外しておいた方が大気圧がクランクケース内にかかりスムーズにオイルが抜ける為です。またこの時にフィラーキャップの座面にOリングが装着されている事を確認し劣化やオイル滲みがあった場合は交換してください。
ドレンボルトを取り外しオイルを抜く
ここでオイルを抜く為にドレンボルトを取り外します。 TWのドレンボルトは43Nmというトルクで締め付けられており、他の車種に比べ固くしまっています。頭を舐めてしまったり破損させない為に適切な工具の選択が必要です。 また回転方向にも十分に注意してください。ボルトを正面からみて左回り(反時計回り)に回し緩めます。使用する工具は眼鏡レンチかショートソケットレンチに長めのスピンナーハンドルを組み合わせた物がおすすめです。モンキーレンチや片口スパナ、短いハンドルのラチェット等を使用すると緩まないばかりかボルト頭を舐めてしまいます。 回転方向を間違え受け側のネジを破損させた場合はクランクケースの修理、又は交換が必要になり高額な修理費用が発生します。
スプリングとオイルストレーナーを取り外す
ドレンボルトを取り外すと内部にスプリングとオイルストレーナーという茶漉し状の網が出てきます。これらの組付け向きと順番をしっかりと覚えておいて下さい。 これらはオイル内の不純物を取り除く物で非常に重要な物です。取り外した後に網に付着しているゴミやスラッジ(鉄粉等)は綺麗に落としておいて下さい。
オイルフィルターカバーを取り外す
オイルフィルターを同時に交換する場合は、ここでエンジン右側側面のボルト3つで固定されているフィルターカバーを取り外します。
オイルフィルターを取り外す
次にフィルターを取り外します。ここで重要なポイントはフィルター本体に取り付けられているラバーがエンジン側やカバー側に張り付き残る事があります。これに気付かずに新しいフィルターを組み付けてしまうと油圧の低下を招きエンジン損傷に繋がるので必ず確認して下さい。
ドレンボルトに装着されているOリングを交換する
次にドレンボルトに装着されているOリングを交換します。 Oリングの純正品番は93120-347A1(税込132円)です。 このOリングはオイル漏れを防ぐ物でオイル交換の度に新品に交換する事が望ましいです。交換しなかった場合必ずオイル漏れが発生する訳では無いですが再利用する場合はひび割れや破れ、硬化していないかチェックしましょう。
スプリングとオイルストレーナーを装着する
スプリングと清掃したオイルストレーナーをエンジン側に組み付けます。 この時、順番に注意して下さい。まずストレーナーを外側に網部分が向く様に組み付けた後スプリングを組み付けます。画像の様にセットにして組み付けても問題ありません。
ドレンボルトを規定トルクで締め付ける
ドレンボルトをトルクレンチを使い規定トルクで締め付けます。この時、ドレンボルトへのOリング組み付け忘れがないか確認して下さい。
また、TWのドレンボルトは43Nmという比較的高いトルクで締め付ける為、必ずトルクレンチを使用してオーバートルクやトルク不足を防止して下さい。
オーバートルクはクランクケースやドレンボルトの破損、トルク不足はオイル漏れの原因となってしまいます。
新品オイルフィルターを装着する
新品オイルフィルターをエンジンへ装着しますが、ここで重要なポイントがあります。
TWのオイルフィルターにはバイパスバルブというバルブが付いています。バイパスバルブはフィルターがゴミ等により詰まってしまった場合に開く事でオイルがエンジン内に循環されなくなる事を防いでいますが、この組付け向きを間違えるとオイルラインが塞がる事でオイルが循環されなくなり、エンジンが焼き付き損傷します。
このバイパスバルブは車種毎に組み付け方向が定められており、TWの場合はバイパスバルブがエンジン側になります。(バイパスバルブがカバー側の車種の方が多い為、間違いに注意。)
バイパスバルブの見分け方は簡単でフィルター中央が塞がっている下記画像1枚目がバイパスバルブ側で、2枚目にはバルブ反対側と記載されています。
ただ、フィルターカバー内側に突起があり、向きを間違えた場合は上手くカバーが付けれない為、途中で気付く事が出来ると思いますが、バイパスバルブ無しの間違ったフィルターを組み付けてしまう恐れもある為、バイパスバルブの有無を必ず確認して下さい。(バイパスバルブ無しの間違ったフィルターを組み付けてしまった際も油圧の低下によりエンジンが損傷します。)
オイルフィルターカバーを規定トルクで締め付ける
フィルターを組み付けた後にフィルターカバーを規定トルクで組み付けます。フィルターカバーには2種類のOリングが装着されており組み付け忘れに注意です。(新品交換が望ましいです。)
フィルターカバーボルトの締め付け規定トルクは10Nmです。ドレンボルトと違いサイズの小さいボルトで、オーバートルクによるネジ山の破損が非常に多いため、トルクレンチの使用をおすすめします。
特に右上の長いボルトはカバーを貫通しクランクケースに直接固定される為、ネジ山の破損はクランクケースの破損となり高額修理の原因となります。
ここのボルトは規定トルクを守った場合でも度重なる脱着でネジ山が破損しやすく注意が必要です。(ネジ山破損した場合でも技術のあるショップではヘリサート加工を行いクランクケース交換を行わなくても修理可能です。)
新品オイルを入れる
新品オイルをオイルジョッキで注入します。TWのオイルとフィルターを交換した場合の注入量は1.1ℓです。(オイル交換のみの場合は1.0ℓ)
使用するオイルですがオートバイ専用で、SAE粘度分類10W-40の部分化学合成油であれば問題ありませんが、TWの場合においては夏場に過酷な条件で使用する場合は20W-50の部分化学合成油をおすすめします。
SAE粘度分類と言うのは「w」が付く数字が低温時の粘度を表し、始動性に影響があります。「w」のつかない数字は高温時の粘度指数で数字が高いほど油膜性能が切れにくい事を示しています。
夏場のロングツーリングや高速巡行等の過酷条件ではTWの場合20W-50でも硬すぎる事はなく、夏場とそれ以外の季節で使い分けている車両の方が圧倒的にエンジン状態は良いです。(夏場以外での20w-50は固すぎる為注意。通常使用で適切なオイル管理ができる場合は通年10w-40で大丈夫です。)
また、100%鉱物系オイルの様な激安オイルではなく、オートバイ専用の部分化学合成油であれば良いです。全化学合成油の様な高級オイルである必要は有りません。それよりも粘度とオイル管理に気をつけた方がエンジンに優しいです。
フィラーキャップを装着する
フィラーキャップを装着する際に座面に取り付けてあるOリングの組み付け忘れに注意して下さい。
各部オイル付着部を脱脂する
ドレンボルト付近やフィルターカバー付近に付着したオイルを綺麗に拭き取りましょう。
オイル交換完了後にオイル漏れのチェックを行いますが、オイルが付着したままですと判断が出来ないので必ず拭き取りましょう。
エンジン始動し暖機する
エンジンを始動させアイドリング状態にします。エンジンが始動する事でオイルポンプによりクランクケース内のオイルがエンジン全体に循環され、オイルラインに混入したエアが抜けます。(フィルターを交換した場合にオイルラインにエアが噛みやすいです。) TWの場合1〜2分のアイドリングで充分です。
この作業を行なわないと適切なオイル量の確認が出来ませんので必ず実施して下さい。
エンジンを停止させる
エンジンを停止させ3分程度おきます。
オイル量とオイル漏れを確認する
エンジン停止直後は一部のオイルがエンジン上部へ移動しているので、エンジンを停止させ数分後にオイル量の確認を行います。
エンジン全体に循環されたオイルがエンジン停止後に重力によりクランクケース内に落ちてくる為、エンジン停止直後にオイル量を確認するとオイルが足りないと誤認してしまいます。
オイル量の確認は車両を垂直に立てた状態で行い、エンジン右側の点検窓にて行います。
下側のラインと上側のラインの間に油面があればOKですが下側ラインぎりぎりの場合は補充しましょう。上側ラインを少し超えるくらいは大丈夫なので抜いたりする必要はありません。 (バイクを垂直にしていないのに上側ラインに油面がある場合等は入れ過ぎです。)
最後にドレンボルト付近、オイルフィルター付近、フィラーキャップ付近のオイル漏れを確認し、問題なければ全ての作業終了となります。