整備教室セビスクでは"趣味ではじめる二輪整備"をコンセプトにバイク整備が初めての方から上級者まで楽しめる講座を開催しています。

興味のある方は現在開催中の講座をご確認ください。

【完全解説】カブのエンジン(腰上)の分解・オーバーホール・組み立て方

参考動画

用意するもの

メガネレンチ Amazon
(セットで購入するのがおすすめです。)
プラグレンチ16mm Amazon
ラチェットハンドル

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(ソケットとセットでの購入もおすすめです。)

バルブスプリングコンプレッサー

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鉄ハンマー

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バイスプライヤー(250mm)

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Tレンチ

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シリンダーヘッドスタンド  
M8-1.25ボルト

ホームセンターで買えます。

エンジンスタンド

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トルクレンチ

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シックネスゲージ

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オイラー(180mlくらいで可)

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ペンシルグラインダー(電動で可)&ゴム砥石かペーパー砥石

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サンドペーパー(#80,120,600くらい)

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防護眼鏡

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ピンセット(小さく細いもの)(先はマグネットなし)

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千枚通し、くじり(丈夫なもの)

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マグネット棒(細いもので伸縮出来るタイプ)

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マイナスドライバー(細目)

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ストック部品

  • シリンダーベースガスケット(モデルによって違いあり)
  • ヘッドガスケット(モデルによって違いあり)
  • コッター(紛失時予備)
  • ノックピン(Amazon
  • ヘッドとシリンダーのサイドにあるプラスの3番の締め付けボルト(Amazon
  • タペットキャップのOリング(Amazon
  • ステムシール(Amazon

要チェックポイント

  • 分解時は写真を撮りながら進めると組み付け時に役立ちます。
  • パーツトレーを複数用意してヘッドの部品、シリンダーの部品、その他、といった感じで分けておくと組み付けの際にわかりやすくなります。

エンジン分解・腰上の取り外し

まずはエンジンスタンドにエンジンを固定させましょう。今回はエンジンオイルは抜かないで作業しますので画像のようにヘッドが上を向くように置いています。エンジンスタンドの形状によって上に向けられない場合は事前にエンジンオイルを抜いてから作業を行いましょう。

タペットキャップを外します。熱の入る部分ですので固くなっていることがあります。

そんな時は掌でメガネレンチの柄をパンと叩くと外れやすいです。その際は工具がキャップの先端から外れないように反対の手で抑えておきましょう。

ヘッドサイドカバーを外します。3本のボルトのうち中央のボルトは反対側までつながっています。

ボルトを引き抜く際は反対のL側のカバーが落ちないように抑えておきましょう。

この部分はアルミワッシャーが入っています。取り外し時、取り付け時にも忘れる方がいますので注意してください。

残り2本のボルトを外してカバーを取り外します。

圧縮上死点に合わせる

腰上の分解・整備は基本的に圧縮上死点で行います。ですので作業を進める前に圧縮上死点に合わせます。

カムスプロケットのトップマークとヘッドのマークを合わせます。

ACGアウターのTマークとケースのトップマークが合ってるか確認します。

ジェネレーターの締め付けナット14mmを抑えながらカムスプロケットの8mmを緩めます。

カムスプロケットのボルトを抜いたら細めのマイナスドライバーなどでカムスプロケットを手前に軽く引っ張って落としておきます。

ヘッドの締め付けボルトをプラス3番のTレンチでで緩めます。この部分は相当固く締まってますので舐めないように注意しましょう。

この際、押さえつける力8割、回す力2割を十分に意識して取り組んでください。

少しでもやばそうだなと思ったら即座に次の手順に切り替えてください。

舐めた、もしくは舐めそうだなと思った時はバイスプライヤーの出番です。ポイントは大きめのバイスプライヤーを使うと失敗しません。

もしボルトを痛めてしまった場合は今後のことも考えて新品に交換しておくことをおすすめします。

ヘッドカバーの締付部は指を指しているエキゾースト側のR側は銅ワッシャーになっています。ワッシャーの色が一つだけ茶色になっているのでわかりやすいですね。

ナットは指を指しているL側のみHEXナット、他3つは袋ナットになっています。

エンジンパーツは原則、対角線で少しづつ緩めていきます。少しづつとおおよそ45度ずつくらいTレンチを回していくイメージです。

ナットとワッシャを外したらヘッドカバーを取り外します。取り外し部品はなくさないように必ずパーツトレーに入れておきましょう。

ヘッドを外します。引っかかって外しにくい場合は軽く揺らしながら持ち上げると外しやすいです。

外にOリング、中に金属製のカラーがありますので外しておきます。

カムチェーンの下にあるカムスプロケットもこのタイミングで外しておきます。

ヘッドとシリンダーの間にあるヘッドガスケットを取り外します。

ヘッドガスケットは薄い金属を3枚重ねた構造をしています。

表面を触るとうっすらと凹凸があるのがわかります。

基本的に1回使ったら交換ですが丈夫ですので表面の凸凹が残ってるなら再利用も可能です。

2か所あるノックピンを外しておきましょう。

カムチェーンガイドローラーを緩めます。

ローラーをペンチで掴みながら横のボルトを引き抜きます。

アルミワッシャーが入ってますのでお忘れなく!

シリンダーを固定しているボルトを外します。プラス3番のTレンチで舐めないように押し付ける力8割、回す力2割で進めます。

少しでも舐めそうだなと感じたら決して無理せず先のプライヤー作戦に変更しましょう。

ケースが傷つく覚悟は必要ですが大きめのマイナスドライバーやタイヤレバーで少しごじると外しやすいです。

シリンダーを取り外します。

シリンダーベースガスケットについている角リングはなくさないうちに取り外しておきましょう。

ピストンピンクリップが飛んで行っても腰下に入らないようにウエスでカバーしておきます。

ピストンピンクリップを先のとがった工具を使って取り外します。その際クリップを飛ばさないよう左手親指で押さえておきましょう。

ピストンピンをラジペンで押して逆から抜きます。ピストンピンはクリップを外した側から抜くことが出来ます。その際,コンロッドに無理な曲げ応力が掛からないようピストンを押さえておきます。

ピストンが外れたらピストンリングを確認します。トップリングとセカンドリングを持って自由に動くか確認しましょう。

次にピストンスカート部の傷を確認します。

上の写真はダメージを受けているピストンです。

12Vのカブはスタッドボルトが緩んでることが多いのでスタッドボルトセッターを使って確認し、必要に応じて増し締めしましょう。

スタッドボルトセッターがない場合はナットを2つ使ってダブルナットにすると締めることが出来ます。(締め付けトルク1.2kgくらい)

ピストンリングの外し方

ピストンリングはオーバーホールするなら基本交換するのがセオリーとなります。非常に変形しやすいので再利用を考えている場合は取り外しには細心の注意を払いましょう。

リングが途切れている合口部分の片側を押さえながらもう片方を少しずつ外します。一気に外そうとせず少しづつ外すようにします。

トップリングとセカンドリングには実は裏表があります。リングの表面をよく見ると「M」やら「T」やら何かしらの刻印が入っているのが上になります。

距離走っているエンジンだと刻印が摩耗して消えてしまっていることが多々ありますが表裏を間違えてしまうとスモーキングの原因になりますし、燃費も悪化します。

上から3つ目のオイルリングやその下にあるギザギザのエキスパンダーは表裏ありません。

エキスパンダーの上下にあるオイルリングはアッパーとロアを間違えても大丈夫です。ただし、再利用する際は当たりが付いてますのであたりを確認してから組むことをおすすめします。

ピストンのメンテナンス・組付け

まずはピストンヘッドのカーボンを落とします。

耐水ペーパーに灯油をつけてピストンヘッドのカーボンを削ります。形状に合わせて真鍮ブラシも使い分けましょう。バルブリセスも確認してカーボンが付着していれば清掃しておきましょう。

スカートのてかってる部分はペーパーで横向きに磨きます。絶対に削りすぎてはいけません。

ピストンにはオイル溜まりを作るために元々横向きに削られてます。ですのでサンドペーパーは縦方向ではなく横向きに削りましょう。

作業終了後は金属粉などが残らないようにパーツクリーナーで洗浄しておきましょう。

ピストンリングの組み付け

洗浄が終わったらピストンリングを組み付けます。まずエキスパンダーを組み付けてからオイルリング2枚を組み付けます。

組み付け時は絶対にリングを広げ過ぎないように注意しましょう。

一気につけようとせず少しづつゆっくり付けましょう。

全てのリングが取り付けられたら合口の向きを確認しましょう。

ピストンリングの組付け方向は上の画像のようにします。

わかりやすいように拡大したものを並べておきます。

ピストンリングとスカート部分にオイルを塗っておきます。

シリンダーのメンテナンス・組付け

まずはシリンダー内を見てテカっている部分やクロスハッチの取れている部分を確認します。

クロスハッチを付けたい部分に15度から20度くらいの角度で60〜80番のやすりでクロスハッチを付けます。ピストンのスカートと同様に削りすぎないように注意しましょう。

ピストンを入れやすくするためにシリンダー内にオイルを塗ります。

シリンダーにピストンを挿入します。ピストンリングコンプレッサーを使うとピストンリングを抑えなくて済むので楽に入れることが出来ます。

向きはピストンリングコンプレッサーの持ち手のある方がIN側です。

ピストンとシリンダーを取り付ける前にクランクケースにガスケットと角リング、ノックピン2つ、ガイドローラーを取り付けましょう。

オイラーでコンロッド大端と小端にオイルを差します。

シリンダーとピストンを入れ、コンロッドとピストンの位置を合わせてピストンピンを奥まで押し込みます。

ピストンピンクリップがクランクケース内に落ちないようにウエスで蓋をして、クリップを取り付けます。

クリップを付け終えたらクリップの合口がピストンの切り欠き以外の部分にずらしておきましょう。

シリンダーとアイドラーの位置を合わせてアイドラーを仮付けします。ボルトのアルミワッシャーを確認しておきましょう。

ピストンを揺らしながら少しづつ入れます。その際、画像のようにカムチェーンを挟まないように注意しましょう。

シリンダー脇にあるプラスのボルトを仮付けした後、アイドラーのボルトを1.2kgf・mほどで締めておきます。(締め忘れ多発部)

シリンダーのセットが完了したらヘッドの整備に移りますのでシリンダーにはゴミなどがかからないようにウエスをかけておきましょう。

シリンダーヘッドのメンテナンス・組付け

M8-1.25のボルトを使ってロッカーアームシャフトを抜きます。

シャフトを抜くとロッカーアームを外すことが出来ます。外したシャフトとロッカーアームはINとOUTどちらでも使えますが上の画像のように分けて置いておくとタペットクリアランス調整の時に楽です。

カムを外します。

専用のスタンドにセットします。

バルブスプリングコンプレッサーをセットします。この時、裏側はバルブの中央に当たってるか確認しておきましょう。

コンプレッサーを締め込むと稀にコッターがはじけ飛んで紛失してしまうことがありますのでウエスで抑えながら作業を進めます。

水平に押さえながらコンプレッサーを回し込み「コクンッ」と音が聞こえるのがコッターが外れた目安になります。

コッターが外れたらマグネット棒でコッターを取り出します。

同様にリテーナとスプリング、スプリングシート(紛失しやすい)を取り出します。

バルブは押し込んで裏から引き抜きます。

ステムシールは大きめのマイナスドライバーでテコの原理を使って外しますが基本的には外したものは傷などがついている可能性がありますので新品への交換をおすすめします。

付ける時はオイルを付けて押し込むだけです。ステムシール再使用の場合はヘッドにバルブとステムシールをセットした状態で手を放してバルブがストンっと落ちてしまうようだとステムシールの締め代が無くなっているため交換が必要です。

エキゾーストポートや燃焼室、バルブステムにカーボンが付着しています。カーボンが溜まったまま放置すると圧縮費が上がります。バルブシートの間にカーボンが挟まるとシールが出来なくなって燃焼ガスが抜けて圧縮が悪くなることもあります。

最悪、燃焼ガスが抜け、カーボンがあるとヒートスポットになる箇所があり、異常燃焼(デトネーション、プレイグニション)が起こるリスクがあります。異常燃焼はピストンやバルブを溶かしてしまう恐れもあります。

エンジンヘッドをバラすことがあるならカーボンは綺麗に取り除いておくに越したことはありません。

ミニルーターを使ってカーボンを研磨します。

削りすぎは厳禁です。ほどほどくらいに考えておきましょう。

この時、バルブと接する部分であるバルブシートは削らないよう注意しましょう。

バルブフェイスを平らなところで紙やすり600〜1000で整えます。

光明丹をオイルに溶かした液をバルブのシート面に薄く塗ります。

刺してタコ棒をくっ付けて、コンコンコンとやって軽く押さえつけながら一周させる

バルブの当たり面を見て全周にわたって当たりがあることを確認する。あたりの有無は光明丹にうっすらとできた黒い線で確認します。

バルブシートもオレンジ色が全周にわたって付いているか確認します。

均一に付いていればすり合わせの必要はありません。

当たりのラインが不均一だったり途切れている場合は擦り合わせが必要です。

細目のコンパウンドをバルブの当たり面に全周塗ります。

バルブをセットしてタコ棒をセット、回転方向はどっちでも大丈夫ですが回しながら上下に動かして同じ回転方向の時に擦るようにします。

どれくらいやるかは当たり次第です。定期的に光明丹で確認しながら作業を繰り返します。

擦り合わせが終わった後、パーツクリーナーなどでコンパウンドを綺麗に落としておきましょう。

バルブ周辺パーツの組み立て

まずはステムシールぶオイルを付けて押し込むように装着します。ステムシール再使用の場合はヘッドにバルブとステムシールをセットした状態で手を放してバルブがストンっと落ちてしまうようだとステムシールの締め代が無くなっているため交換が必要です。

次にスプリングシートを入れます。

バルブステムにオイルを塗って刺し、上下に動かして動きを確認します。ジャリジャリする場合はペーパーの削りくずやコンパウンドが残ってる可能性がありますのでパーツクリーナーでしっかり洗浄します。

バルブスプリングを入れ、リテーナとコッターをパーツクリーナーで洗浄し、バルブスプリングの上にリテーナを乗っけます。

バルブスプリングコンプレッサーをセットしてコッターをセットします。その際、コッターをセットする隙間の大きさをみて先に隙間の狭い方に1つ目のコッターをセットします。

上の画像でバルブとリテーナーの隙間を見ると右側の方が隙間が小さいことがわかります。この場合は右側に1つ目のコッターをセットします。

ピンセットを使って隙間の小さい右側にコッターをセットしました。

逆側に2つ目のコッターをセットしました。

続いてコッター同士の間隔の調整を行います。バルブスプリングコンプレッサーを少しだけ緩め(コッターが少し動くくらい)ピンセットなどで調整します。コンプレッサーを緩めすぎるとコッターが動かせなくなります。

画像ではかなりわかりにくいですがコッター同士の隙間を左右で同じくらいに調整できていれば問題ありません。

コッターの位置を調整出来たらコンプレッサーを押さえながらゆっくりコンプレッサーを緩めます。

瞬発的にバルブスプリングを縮めてコッターを食いつかせるためにステムヘッドに金属棒を当ててハンマーで叩きます。この時、リテーナには絶対に当てずステムヘッドだけ当たるようにします。

画像ではエクステンションバーを使っていますが程よい何か別のものでも問題ありません。

カムのベアリングが綺麗に回ることを確認してオイルを差します。

カムの山が下になるようにヘッドに入れます。

ロッカーアームをセットし、M8-1.25のボルトを使ってシャフトを挿入します。

8×14のノックピンを対角線状に入れ、ヘッドガスケット、カラーとOリングを入れます。

ジェネレーターのTマークと切り欠きを合わせてカムスプロケットをトップマークを上にセットします。

カムスプロケットを左手の人差し指で支えながら右手を使ってヘッドに挿入

カムスプロケットをセンターノックにはめます。もしうまくはまらない場合はマイナスドライバーで持ち上げてあげましょう。

ボルトを仮止めしてトップマークの位置を確認します。

カムスプロケットのトップマークとヘッドの切り欠きがずれていたら、カムスプロケットに乗ってるカムチェーンをマイナスドライバーを使って動かします。

ヘッドカバーガスケットをセットします。前後裏表ありますが合っていないとうまく入りません。

ヘッドカバーも同様ですがガスケット違ってカバーの方には矢印マークが付いていて、矢印側がエキゾースト側になります。

ワッシャーをセットします。エキゾースト側の銅ワッシャーの位置に注意しましょう。プラグを手前にしてみた場合に右下の位置になります。

ちなみにワッシャーには表裏があって、丸い側が上になるようにセットします。

ナットもエキゾースト側のL側のみHEXナット、他3つは袋ナットになっています。

締め付けは対角線で少しづつ締めます。この後にトルクレンチで締めますのである程度締めておく程度で大丈夫です。

トルクレンチを1.2kgf・mにセットし、対角線上に少しづつ締めます。必ず少しづつ締めてくださいね。

サイドのプラス#3のボルトを上下ともに締めます。締める際も舐めないように注意しましょう。

カムスプロケットのボルトを0.8kgf・mで締めます。ジェネレーターは14mmメガネかボックスレンチで固定しておきましょう。

最後に上下のトップマークが合っているかもう一度確認します。

ヘッドサイドカバーRのボルトを1.0〜1.2kgf・mで締めます。

ヘッドLサイドカバーの入れ忘れに注意しましょう。カバーにある周り止めの突起は必ず所定の位置に合わせましょう。

稀に突起が折れてて無いことがあります。そんな時はカバーの裏を見て画像の向きでセットしてください。

ヘッドをばらして再度組んだ場合は必ずタペット調整を行いましょう。タペット調整については下記のページを参考にしてください。

スーパーカブ・リトルカブのタペット(バルブクリアランス)調整の方法

 

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最後に1.4kgf・mでタペットキャップを取り付ければ完了です。